設立趣旨

 1980年代初期に我が国に導入された近赤外分光法は、当初、粉砕した小麦や大豆など低水分で均一な試料を対象とした応用が主体でしたが、近赤外装置、コンピュータ及び解析手法の進展にもとない、いろいろな形態の試料の測定が可能になり、測定項目も内容成分の定量分析から偽和物の検出、原料の識別などの定性分析へ拡大しました。

 このような中で、1985年に発足した(社)日本食品科学工学会の主催の「非破壊計測シンポジウム」は、同法の普及・拡大において重要な役割を果たしてきました。著名な方々による講演、各メーカによる機器の展示、一般のポスター発表などを通し、同法が普及・拡大したと思われます。

 しかしながら、ハード・ソフトの改良により、その応用範囲は、ポリマー、繊維、医薬品、化粧品、医療など、農業・食品以外の分野に大きく拡大し、(社)日本食品科学工学会が当該シンポジウムを主催することによる違和感が、他分野からの参加を躊躇させる結果となりました。また、近赤外分光法の名称がシンポジウム名に含まれていないことが、近赤外分光法の宣伝効果を低下させました。

 以上のような背景のもとに、各分野からの参入を促進するため、また更なる発展を期待して、第20回非破壊計測シンポジウム(2004年11月)の開催を節目に同シンポジウムを発展的に解散し、翌年2005年11月に「近赤外研究会」を発足しました。同研究会は「近赤外フォーラム」の開催、Karl Norris Award等の授与、近赤外分光法に関する情報の提供等を目的としました。当該研究会が近赤外分光法の更なる発展に貢献できることを願う次第です。

 最後になりましたが、非破壊計測シンポジウム時代からこれまで、ご参加いただいた方々、及びご支援いただきました企業・団体に対し心から感謝申しあげ、近赤外研究会の設立に関する説明とさせて頂きます。

2013年4月
近赤外研究会 前会長 河野澄夫